アスベストとは、人類にとってギリシャ神話や竹取物語の時代から建築材料として、耐久性・耐熱性・電気絶縁性などで優れ、かつ、大量に採掘され安価であるため、非常に重宝された鉱物です。しかし、1970年頃から肺癌や悪性胸膜中皮腫の発症に関連がある、健康被害を及ぼす危険な物質であると認識されて、国際的に規制がされてきました。しかし、日本では、「管理して使えば安全」として、十分な規制を怠ってきました。2005年に尼崎市で大量に患者がいたと報道された、いわゆるクボタショックを機に世間の注目を集め、対策が急速にすすみました。
香川県では、高松市屋島西町にエタニットパイプ、三豊市詫間町に神島化学という、それぞれアスベストを大量使用してきた2大工場がありました。そこで働いていた労働者の健康被害に対して高松平和病院を始めとする香川民医連で、1997年から塵肺健診を開始し、2005年に「香川民医連アスベスト対策会議」を発足、2010年に「香川県アスベスト被害者を守る友の会の活動」に名称を変えて医療支援してきました。友の会の活動では、毎年総会と記念講演会を開催しており、そこでは社会学の大学教授やジャーナリスト、呼吸器外科医師などの専門家による学習の場を開催してきました。
このたび、7月9日に今年の総会が開催され、岡山でアスベスト被害者を支援する則武透弁護士のお話を伺いました。私たち病院が支援している労働災害とは別建ての、建設アスベスト訴訟の分野で活躍されています。かつては、工場だけでアスベストが使用されていたわけではなく、建設現場のありとあらゆる工程でアスベストが使用されてきました。有名なものでは、体育館や駐車場、ビルの壁・配管、造船、トンネルなどです。そこで作業し、粉塵を吸引した労働者は、屋島と詫間町の工場で働いていた労働者とは比べものにならないほど潜在しているといわれています。
「生活と労働から疾病をとらえる(民医連綱領)」平和病院・民医連では、今後も学習を続けながら、法律家や労働組合の方々と連携をとり、アスベストによる健康被害の電話相談や診断、治療といった救済・支援活動を今後も続けていきます。