Vol.104

総合診療は日本の医療に広がるのか ~
ドラマ「19番目のカルテ」

先週末に全日本民医連診療所交流集会があり参加しました。その中の企画で、藤沼康樹先生(医療福祉生協連 家庭医療学開発センター長)の講演があり、その講演の一部で触れられていたTBSのテレビドラマ「19番目のカルテ」について触れられました。藤沼先生は10年以上連続テレビドラマを見ていないが、これはずっと見ていたとのことです。医療監修は千葉大学総合診療部の生坂政臣先生(日本専門医機構総合診療領域 担当委員長)が担当する、いわば総合診療界隈の医師の肝いりのドラマでもありました。

専門研修として総合診療科を選ぶ医師は290名(2025年)と伸び悩んでおり、厚生労働省としては将来的には数倍程度までは専攻医数を増やしたいとしています。なぜ増えないのか、についてドラマの中で中心的に描かれています。

研修医側の問題として、総合診療の歴史が浅く、医療者側からも患者側からも認知度が低く、自らのアイデンティティを保ちにくいということがあげられていました。研修医役の小芝風花さんも「なんでも治せる医者になりたい」と意気込んで研修を始めますが、大病院の専門医に囲まれ、患者とも信頼関係を築けず何度も挫折を経験していました。

病院側の問題として、問診に時間をかけなければならなかったり、いわゆるコストの高い治療や検査にあまり重点が置かれないために、不採算部門として認識されます。ドラマでは最終回の病院長選挙で小児科を縮小し、総合診療科の廃止を公約とする候補が「専門性と効率の両立が可能な部門に限られた人材を投入する」「理想だけでは医療は成り立たない、病院は慈善事業ではありません」と演説します。

これに対するドラマでの答えは、主演の松本潤さんが「誰一人とりこぼさない医療、医師同士が協力し合って患者さんに向き合うこと、そして病院の中だけでなく地域全体で手を取り合う体制をつくること」と視聴者に語りかけドラマが終演します。

香川県では昨年香川大学医学部に総合診療科の教授が着任しました。その香川大学総合診療科では今年新たに2人の専攻医が研修を開始しています。そして当院には県内第一号の総合診療科を修了した植本真由医師が日々診療や研修指導で活躍しています。

このドラマをきっかけに社会全体の認知度が上がり、総合診療の裾野が広がっていくことを期待しています。

診療所交流集会での香川からの参加者