機関誌「民医連医療」のエッセンシャルワーカーについて取り上げた特集が興味深かったので、取り上げたいと思います。
筑波大学人文社会系田中洋子教授と全日本民医連副会長で看護師の坂田薫さんが、エッセンシャルワーカー、特に看護師の置かれている実態について対談したものです。
コロナ禍で急にコトバだけが取り上げられたエッセンシャルワーカー、特に2020年4月に「コロナ一斉休校」で子どもが強制的に学校から家にいることとなり、仕事を休めないパートタイマーのお母さんがこれを機に一斉に職を失いました。「社会に不可欠な仕事なのに、なぜ非正規で低賃金、低待遇なのか」について、3点にわたって原因の解明をしています。
1点目は、日本社会の高度成長期に培われた男性フルタイム正社員による、ステレオタイプの「男は外で稼いで女は家で」という価値観のために、主婦や学生は安く使えばよいというもの。
2点目は、「女性のケア労働の低評価」介護や看護に大きく関わる女性が家の中で無償で行ってきたことに対する価値の低さ、ただでやって当たり前でしょ、という価値観が根底にあると指摘。
3点目は、それらを完全に後押しする政治や経済の在り方。バブルがはじけた2000年頃から急速にすすんだ、新自由主義的政策の中、企業の儲けにならないものについては、すべて予算削減の対象となりました。医療・介護・保育・教育、守ったり育てたりするものを排除していく考え方がいまも世の中に禍根を残しています。
特集の後半は田中教授が長年研究生活をしているドイツを例にとり、看護師の労働条件や待遇、従事者数の違いについて、日本がどれだけ遅れているかについて思い知ります。(ドイツだって、すべてがバラ色というわけではないとは思いますが)
それでも世界の流れに逆行する日本であるのは間違いなく、政治や社会を変えないと我々の生活や生きていく基板が確保されないのだなと世界との比較で改めてよくわかりました。特集の最初にも書かれていますが、すべての看護職員に読んでほしいです。