Vol.74

診療報酬改定に際して

6月から今回の診療報酬改定がスタートしました。各病院・診療所が愕然とするほどの圧倒的なマイナス改定であり、対応に手が取られています。昨年の秋以降、各医療団体は苦しい経営状況の改善を図るために改定率3~4%増を要望していましたが、フタを開けると僅か0.88%増でした。これでは質を維持した医療経営ができず、物価上昇や賃金改善、人手不足にまったく対応できません。今後、日本の医療機関・介護事業所経営が成り立たなくなり、倒産・破綻が相次ぐのではないかと懸念されています。いまこそ、「たたかい」の部分で地域住民、自治体に医療機関の窮状を知ってもらい、診療報酬の抜本的な改定を求めていかなければなりません。

さて、「対応」の部分ですが、高松平和病院に関しては、外来部門で「特定疾患療養管理料」に代わり、やや手間のかかる「生活習慣病管理料」を算定する必要があること、訪問診療部門で施設系への訪問診療の点数が大幅に切り下げられたこと、などがあります。当院の収益の7割を占める入院部門に関しては、「急性期一般入院料4」「地域包括ケア入院医療管理料1」「緩和ケア病棟入院料1」を算定しており、今回の診療報酬改定でのマイナスの影響は限定的です。これは当院が10年以上かけて築いてきた「地域医療の最前線」と「他医療機関との連携」に重点を置いてポジショニングしてきた成果にほかなりません。今後もこの方向を伸ばしてこそ、地域で輝く病院になることができます。

しかし、今回の改定ではなんとか負の影響は免れたものの、次回の改定や自前の医療提供体制の推移を常にみておく必要があります。国民・地域住民が安心して生活できる基盤である、社会保障の充実・診療報酬の抜本的な底上げを要求する「たたかい」と、地域住民や職員にとって、いつもの高松平和病院であり続けるための「対応」の両面をすすめていかなければなりません。

緩和ケア病棟から見える梅雨の晴れ間の栗林公園と紫雲山