Vol.73

「若者とともに@宮下与兵衛」~青年論について

「いまの若者は何を考えているのかさっぱりわからん」 私を含めて40歳以上であれば、一度は言ったり、思ったりしたことがあるでしょう。世間では「ゆとり・さとり世代(20-37歳)」「Z世代(9-28歳)」とひとくくりにされたりします。

紹介する書籍「若者とともに@宮下与兵衛」はそういった世代的なくくりではなく、現代の青年の多くがどうして政治や社会に無関心なのか、ということについて論じています。さらに、政治や社会といかに関わっていくのか、解決策についての実例・考察がされています。

日本の若者は諸外国に比べて、「自分を大人だと思う」「自分は責任がある社会の一員だと思う」というアンケート結果で「そう思わない」が比較的多いという結果になっています。子どもは「社会」という共同体のなかで大人に育っていく「青年期」を過ごします。この「社会」とは、人類がつくってきた自由・平等・民主主義・正義・共同・連帯などによって成り立つ福祉国家的共同体であり、その「社会」体験によって大人、市民に育っていきます。

しかし、1980年代からこの「社会」を壊してきたのが新自由主義です。経済をはじめ子どもを取り巻く福祉や教育についても「民営化・規制緩和・自由競争」を軸とした新自由主義的な中央集権化と競争原理の導入がすすめられていきました。大人の社会モラルが崩壊していった結果、若者は疎外感、集団を形成しない、社会参加しても社会は変わらない、選挙に行かない、政治はコスパが悪い、宿命論・諦めを意味する「ガチャ」、といった世代になっていきました。

その反面ボランティア(社会に貢献したい)意識は壮年期よりも高いこともあるため、自分が納得できる内容と機会があれば、活動に参加しやすいという側面もあります。ここをうまく青年を巻き込んでいくということが大事とのことです。

我々医療従事者でいえば、社会に目を向けなければ個人の健康や生活を守れないことを往々にして経験します。いのちと健康を守りたいという初心を忘れず、一人ひとりの症例を大事にして、想像力や共感力を磨き、他人事ではなく自分の問題と感じられるように個別に学習を積むことです。これからの未来を背負っていく青年が主権者として成長することが社会や組織を存続させていくことができればと思います。

「全日本民医連会長の増田先生も推薦する【若者とともに】@かもがわ出版」