Vol.64

戦争と震災について患者さんから教えてもらったこと

新年明けてから2週間が経ちました。元旦に石川県を中心に能登半島地震が起こってからある程度の時間が経過しましたが、今回の地震災害は半島の先端部に大きな被害が出たことが特徴で、まだまだ十分な支援が行き届かないのが現状です。私たち平和病院の職員一同も被災地に心を寄せ、被災した方々が厳しい現状から早く抜け出せるように私たちができることをしていきたいと思います。

石川民医連の診療所が輪島市にありますが、ここに先週くらいからようやく人的支援が始まったとのことです。しかし、交通が寸断されており、片道5時間、雪などで悪路になると8時間かかるそうです。支援に行こうにも受け入れ体制が整っていないので、十分な支援を届けられないと県連の担当者が言っていました。

さて、私の外来患者で長年にわたり高松空襲の語り部をしている戸祭恭子さん(92歳)が先週受診時に仰っていたことを紹介します。

『これだけたくさんの人が地震で死ぬのに、なにも爆弾落としてまで人を殺さんでええのに。人が死ぬことに慣れてしまう。気力がなくなってしまう』

これは『無神経になって死に対して怖くなくなることが一番の怖さ』と空襲の語り部の活動でも同じことを仰っていました。(2023年9月5日のRSKのホームページから)

災害で尊い生命や普通の生活が失われたと聞いたとき、私たちはどれだけその背後にある、破壊されたなにげない日常を想像することができるでしょうか。これは戦争についても同じことが言えるのだ、と戸祭さんは教えてくれました。

1年前にタモリさんが言った「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」がますます現実味を帯びてきているように思えてなりません。隣にいる人の生命や生活ほど尊いものはない、ということを改めて痛感し、日頃の医療活動に活かしていきたいと思いました。

そして、戸祭さんには高松空襲の貴重な語り部としてもう少しがんばってもらってもらうため、元気で長生きしてもらうために、少し長めに生活指導を行いました。

今年最初の病院前でのスタンディング行動