Vol.22

子どもの貧困にどう向き合うか~「まず診る、援助する、なんとかする」の実践

先日、中四国の医療系学生の学習企画があり、へいわこどもクリニック所長の小児科医中田耕次先生が「子どもの貧困」という題で講演を行いました。医療系学生には興味のある話題だったようで、WEB開催ではありますが、北は北海道・岩手、南は沖縄からの医歯薬・看護・栄養科の学生約70人が参加し、主催側の医師や学生担当の職員と一緒に学習しました。

講演やその後のディスカッションでも出されていましたが、とにかく子どもの貧困は見えにくい・覚知されにくいこと、また、保護者のキャラクターや地域・社会全体を巻き込む問題であり、個別性が高く解決策が一言でくくれないことが特徴です。参加学生から出された質問「なぜ貧困の子どもの肥満率が高いのですか?」、その回答「炭水化物の方が安く早く空腹を満たしてくれる。野菜や魚などのお金がかかるものを食べられないから」のやりとりには、学生さんの目の付け所が良い点と、太っちょで栄養状態が良さそうな子が貧困に多いという見えにくさに感心しました。

さて、就学援助制度を受けている児童生徒は2002年に10%を越え、2012年の15.6%がピーク、2021年は14.5%であり、7人に1人が受けていることになります。この就学援助を受けることができるのは概ね生活保護制度基準額の1.1~1.3倍という所得制限が設定されており、貧困にほぼ近い所得の世帯に属する子どもたちということができます。これほどまでに多い子どもが貧困の中に放置されている現状であり、子ども時代の貧困は生活習慣、健康管理、学習意欲、自己肯定感などの点で成育の妨げになることが多く、高等教育までたどりつけず、成人になってからも定職につけないことが多く、貧困の連鎖が繰り返されるリスクが高いなどなどの数々のデータで紹介されました。

子ども食堂や無料塾を運営し、居場所を確保する「拠点型支援」と困難性が高い人・医療機関などにも来られない家庭に行政などの機関と連携をとって援助する「アウトリーチ」の二つの支援方法があると紹介されました。

へいわこどもクリニックでは子ども食堂を月に1回、このコロナ禍でもつながりを絶やさないということで運営を続けてきました。また、クリニックに発熱と腋窩リンパ節腫脹で受診し、ネコひっかき病と診断・治療した子どもとその家庭が生活困難であることがわかりました。それがきっかけで自宅の片付け・清掃へ職員や組合員さん総出で出かけ、行政機関とも連携して援助した事例があげられ、「まず診る、援助する、なんとかする」の実践がよくわかる例でした。

参加した学生の感想からは、「誰が(何が)悪いのか原因追及をすることが重要であると同時に、医療者として自分ができることを探し、すぐに行動に移すことの大切さも実感した」とありました。久しぶりに学生さんとたくさん学び、民医連の実践も深く知れた機会となりました。