Vol.34

介護保険制度について考える

10月31日に厚生労働省は介護保険制度の次期改定に向けて[給付と負担の見直し]に関する論点を社会保障審議会に正式に示しました。「利用料負担増」「軽度者(要介護1,2)へのサービス引き下げ」「ケアプランの自己負担導入」がそれぞれの論点となっています。

人間は誰しも年をとります。人の世話になってまで生きていたくない!ピンピンコロリを理想にしている、という方は多くいるでしょう。しかし、長生きすればするほど、年々認知機能やADL機能は低下し、じきに介護が必要な状態になります。寿命が先にくるのか、要介護状態が先にくるのか、病気や事故による怪我など要介護状態になるイベントは誰にでもふりかかってきます。2022年発行の「高齢社会白書」によると、2019年の男性の平均寿命は81.4年、健康寿命は72.7年、女性の平均寿命は87.5年、健康寿命は75.4年。希望する・しないに関わらず、男性で平均8.7年、女性で平均12.1年の要介護状態が予想されています。

利用料負担増に関しては、「一定以上所得」「現役並所得」の判断基準額を引き下げて、2割負担、3割負担の対象をそれぞれ拡大することが提案されており、経済事情によって必要なサービスがますます利用できない事態が拡大する懸念があります。

軽度者へのサービス引き下げやケアプランの自己負担導入は、認定を受けても経済的な事情によりケアプランを作ることができない、ケアプラン作成の前段階で様々な相談支援を受けられないなど、介護保険制度自体にアクセスできず、多くの高齢者が介護保険から最初から排除されてしまいかねません。

これらはいずれも大幅な負担の引き上げと給付の抑制を図るものであり、コロナ禍や物価高騰のもとで苦しんでいる利用者・高齢者はさらなる困難にさらされます。介護保険財政(公費負担の増額)の抜本的な見直しこそこれからの介護事業に対しては求められています。

認知症になったり障害を持ったりしても安心した老後を暮らすためのセーフティネットが脅かされており、このような拙速な改定にはきちんと異を唱えなければなりません。