Vol.32

パーパス・ドリブンな組織 ~プラス1の価値

「船を造りたかったら、人に木を集めてくるように促したり、作業や任務を割り振ったりはせず、はてしなく続く広大な海を慕うことを教えよ」星の王子様の作者サン=テグジュベリの残した名言です。(【だから僕たちは、組織を変えていける:斉藤徹著】P180)

最近のビジネス用語として、パーパス・ドリブンが重要である、パーパスがある組織が発展していると盛んに言われています。パーパスとは、企業や組織の社会に対する約束、存在意義と言われます。香川民医連で言えば民医連綱領、香川医療生協で言えば患者の権利章典、高松平和病院で言えば高松平和病院理念になります。(それぞれシンプルな言葉に置き換えないと今風なものとは言えないかもしれませんが、、)

20世紀型の組織では「囲い込み」を価値創造の拠り所とし、自組織の内と外に高い壁を設けて、自組織のできることをいかに効率よく独占し、他組織と競争することを是とします。これと比して、21世紀型の組織では情報化社会と流動性・多様性を背景にして「呼び込み」を拠り所とし、自組織の内と外の壁は低く、自組織の可能性(パーパス)を内外に示し、それを求心力として多種多様なヒトやモノ、価値を自組織へ呼び込むことを可能にします。

ここで大事なことは社会における自組織の存在意義をすでにあるものとせずに、継続的に自分たちの存在意義や価値を問い続け、世の中に発信し続けるということです。(【PURPOSE -会社は何のために存在するのか あなたはなぜそこで働くのか:ダイアモンド社】第2章)

平和病院を取り巻く環境を概括してみると、私が入職する前には、循環器は心臓カテーテルを行い、消化器は胃癌を内視鏡で切除し、外科はあらゆる癌を手術していました(20世紀型の組織)。しかし現在は地域の病院間の連携がすすみ、急性期から回復期、慢性期、在宅・外来と役割を分けて地域の疾病・患者対応にあたっています(21世紀型の組織)。その中で当院は123床という中小病院であり、大病院と地域をつなぎ、亜急性期から慢性期、在宅医療や緩和ケアを支える病院というやや贅沢な役割を担っています。また、「無差別平等」「SDH」「誰のために・何のために」を合い言葉として、社会的弱者や患者さん一人ひとりの背景を重視した医療を展開しています。病院で働くスタッフ一人ひとりも自分事として日々の仕事の意味を理解し、患者や家族にプラス1の価値を提供できる病院でありたいと思います。

名札の裏に入っている病院理念